着物の紋をご存知でしょうか?
詳しく話すとかなりの長文になってしまうので、参考程度の話になりますが、日本で、家・氏族その他の団体のしるしとして定まっている図柄で、一般的には、その着物を着る人が嫁いだ先の家の紋もしくは生まれ育った家の紋を入れます。
紋を着物に入れる(描く)場合、白く色を抜いてある部分に、墨などで紋の柄を描くのですが、一旦描いた紋を消して新たに描き直すのは大変な手間がかかるので、一時的に紋を変えたいというような場合のために、貼り付け紋という物があります。
この貼り付け紋というのは、生地もしくは紙に紋の柄が書いてある物で、ネット通販などで一般の方も買えるタイプの物は、裏に貼り付けるための糊もしくは両面テープが付いています。
この貼り付け紋を剥がず際に、綺麗に剥がれてくれれば良いのですが、裏面の糊が残ってしまうことも多々あるようです。
この祝着の事例もまさにそうで、市販の貼り付け紋を貼って剥がしたところ、かなり強力な糊の粘着物が残ってしまったそうです(周りに糊が付かないようにフィルムを貼ってから送っていただけました)
貼り付け紋の糊が残った場合ですが、実は残った糊を落とすこと自体はそれほど難しい染み抜き作業ではありません。
難しいのは、糊を落とす染み抜きで元々の紋の柄(上絵)の色が滲んだり薄くなったりしてしまう可能性が非常に高いことになります。
ですので、今回の染み抜きも、お客様に事前にリスクなどの旨をお伝えしたところ、紋が薄くなっても色が滲んでも構わないので、とにかくこの粘着物を除去して欲しいということでしたので、染み抜きをお引き受けいたしました。
上絵が薄くなることが懸念されましたが、見た目に分かるような色落ちは起きなかったので、今回の染み抜きはひとまず成功と言えるかと思います。
【参考価格】一箇所の染み抜き 4,000円程度(税別)(五つ紋の場合、20,000円程度)
(※注※染み抜きは洋服の生地の素材・色合い・シミの濃さなど、状態によって料金が変わってきます。あくまで一例の参考価格となります。クリーニングその他加工は別途料金となります。)