娘さん、もしくは息子さんのお宮参りの時に使った祝着を、今度は三十年振りとかにお孫さんに使いたいのでお手入れして欲しい、というご相談は、季節を問わずよくあるご相談です。
祝着は、使ったとしてもせいぜい二回、多くても三回くらいしか使う機会がありませんので、使い終わるとそのまましまいっぱなしということが非常に多く、何十年後かに取り出してみると、カビによるシミや当時の飲食などのシミで、全体的にシミだらけということも少なくありません。
染み抜きは手間賃仕事ですので、シミが大きかったり多かったりすればするほど、その料金が高くなります。
ですので、お子様用の着物であっても、シミが多数あるような場合は、染み抜き料金は高くなる傾向があります。
また、祝着は、生地そのものの薄さなどから、大人用の着物に比べて丈夫でないことが多く、さらに、絹ではなく人絹と呼ばれていたアセテートというシルクに似た感触の生地を使った物も以前は多く作られていて、染み抜きでスッキリと直せない場合も正直あります。
そのあたりも踏まえると、いっそ新しく購入した方が良いのではないでしょうか?というご提案をさせていただくこともあります。
あとは、その祝着に対する想い入れなどによって、ご依頼いただくかどうかを判断していただければと思います。

女の子用の祝着は、このような朱色や赤色などが大半を占めますが、この赤系の染めの部分に変色シミが発生すると、黄ばみではなく黒い変色シミになることが多いです。
なぜなんでしょう?
すいません、感性で仕事をするタイプの職人なので、知らなくても支障のない理屈や理論には、興味がないんです(笑)
話を戻しまして、このような黒い変色シミは、急激に薬品を反応させる無理な染み抜きを行うと、生地が弱ってしまう可能性が高いので、じっくりと薬品を反応させて染み抜きを行い、出来るだけ生地に負担をかけないようにするのが肝心です。

よく見ると薄く残っていますが、生地を劣化させないギリギリのラインで、見栄え良くなるように染み抜きを行いました。