着物の染み抜きとクリーニングを生業にしております。
11月の七五三のお参りを前にするこの時期は、お子様用のお着物の染み抜きクリーニングのご依頼が非常に多くなる季節です(ご相談自体は夏ぐらいから多くなります。あまりギリギリですと作業が間に合わないこともありますので、ご相談はお早めに)
常々申しておりますが、お子様のお着物全般ですが、基本的に生地があまり丈夫でない物がほとんどでして、染み抜きにおいてはあまり無理が出来ない場合が多いです。
何故か?を具体的に申しますと、染み抜き、特に変色したシミを染み抜きする場合は、シミを薬品で化学反応させて黄ばみなどを抜く作業が必須なのですが、その薬品はシミに対しての効果が高くなればなるほど、生地に対してもダメージを与えるリスクが高まります。
もちろん、そこはプロですからきちんと見極めた上で染み抜きを行っているのですが、シミが濃い場合は染み抜きも強くする必要がありますので、これ以上無理をすると生地が危ないな・・・という判断をすると、シミが残っていてもそれ以上の染み抜きは困難という判断になります。
お子様用のお着物の場合、生地の薄さや正絹と化繊の混紡である場合などの要因により、そうなる場合が多いのです。
そうなると、シミの状態によっては染み抜きクリーニングで今よりも見栄え良く直すことは可能であってもシミが残ってしまう場合というのが出てきます。
そのような場合、どうしたら良いのか?
染み抜きする?新しく買う?レンタルする?
あくまで当店の場合ですが、当店はシミが残る可能性が高い場合は、包み隠さずお客様にお伝えしますし、金額もお伝えいたします。
その上で、それでも染み抜きクリーニングを行うのか?その金額で新たなお品をご購入されるのか?または流行りのレンタルで探すのか?を、お客様にご判断いただくようにお話をさせていただいております。
そしてお客様にご判断いただく際に必ずお話させていただくのは、「そのお着物への想い入れがどれぐらいあるのか?」ということです。
正直な話、購入時にどんなに高価な着物であっても、何十年も経ってシミだらけの着物だったら、市場価値はほとんどありません(人間国宝の作品とかは別ですが)
ですので、その着物の値打ちを決めるのは、お客様がそのお着物をどれだけ想っているか?という点のみになります。
例えば、亡くなったお母様が遺してくれた着物とか、お祖母ちゃんが買ってくれた祝い着とか、リサイクルで安く買ったけど、とても気に入っている着物とか・・・
そのお着物への想い入れが深ければ深いほど、染み抜き屋は持てる技術と知識を最大限に発揮して、そのお着物を直します。
逆にそのお着物への想い入れが特になければ、高額の染み抜き料金をかけて直す必要はないと思います。それこそお金がもったいないです。
仮に染み抜きクリーニングをせずにお返しするとなった場合でも、返送料はご負担いただいておりますが、お見積もりの料金などは一切いただいておりません。
ですので、ぶっちゃけてしまうと、そこまでのお見積りなどにかかった手間はいただけないので、当店は赤字になります(苦笑)
なので、経営者とすれば、うまくお客様を説得して染み抜きクリーニングを行ってお代をいただくべきなのかもしれません。
でも、それはやっぱりしたくないんですよね。
同じお金をいただくのであれば、お客様に喜んでご満足いただいてお金を頂戴したいじゃないですか。
だから、当店になんら利益がなくとも、お客様にご納得いただけるような判断をしていただきたいと常に心がけています(だから儲からないんでしょうけどw)