ボクは大人の今、ヒーローになった

ボクの仕事は染色補正という仕事なんですが、いわゆる手間賃仕事というやつで、掛けた手間の分のお金をいただく仕組みになってます。

毎日毎日、作業場に引きこもってコツコツと地味な作業をしておるわけですよ(笑)

染色補正という仕事は元々、今もそうなんですが、「BtoB」いわゆる業者間でのやり取りをされている方が大半で、ボクのように「BtoC」で一般の方とのやり取りもしている染色補正業の職人って、意外と少ないんですよね。

これは、他の業種の職人さんの仕事もそうなんですが、染色補正業というものが、業者さん(メーカーさん、悉皆屋さん、加工業者さんなど)から仕事の依頼を受けて、ただ黙々と作業するスタイルが仕事的にも経営的にも一番効率が良いからなんですね。

そう考えると、元は裏方の職人なんだから、そのままBtoBをしていた方が何かを大きく変える必要もないし、ぶっちゃけお金の回収も楽だし、リスクを負って時間と手間をかけて新たにBtoCをすることに意味はないように思えます。

それでも、ボクはやはり業者さんだけでなく、お手入れを依頼される方と直接関わりたかった。

今日のことなんですが、かなりお待たせをしてしまって先日仕上がったお品をお返しさせていただいたお客様から、丁寧な直筆のお手紙と共に、お礼のお品を頂戴しました。

ボクは今している仕事以外は、学生時代のバイトのマクドナルドと新卒で入ったケーキ屋さんでしか働いたことしかないので、それほど社会経験が多いわけではないのですが、それでも、こんな風にお金をいただいた上で御礼の言葉と時には過分なお品物までいただいてしまうような仕事って、そうそうないんじゃないかと思うんです。

今回だけでなく、ご依頼いただいた方とこの十年くらい直接やり取りをさせていただいてきて、店頭でお渡しする際に何度も感謝のお言葉をいただいたり、お手紙をいただいたり、メールをいただいたり、それはもう本当に数えきれないぐらいの感謝のお言葉をいただいてきました。

時には、お客様からいただいたお手紙の文面に思わず涙を流したこともあります。

数少ない(笑)同業の友人と楽しいお酒を飲む時、必ずお互い口にする言葉があります。

「お金をいただいた上に、直接感謝の言葉をいただける。こんないい仕事ってないよね」って。

ボクは、子供の頃なりたかったヒーローに、今、なっている

ボクの仕事って、基本的にお客様のお困りごとを解決する仕事なんですね。

「娘に自分の振袖を着せたいけど、シミが多くて出来ないと他店で断られてしまった」
「息子が着たお宮参りの着物を生まれてくる孫に着せてやりたいが、シミとカビだらけで困ってる」
「知人に借りた着物に赤ワインをこぼしてしまった」 などなど・・・

依頼される方の多くは、着物や洋服のトラブルという悪に襲われています。

そんなトラブルという悪をやっつけるボクは、依頼された方を救うヒーローだと言っても過言ではないと信じてるんです。

店主 子供時代

ボクは大人になって、あの頃なりたかったヒーローになった。